10月14日(水)、横浜市都築区の大型マンション「パークシティーLaLa横浜が傾く」、というニュースが報道番組を駆け巡った。販売最大手の三井不動産レジデンシャルが、約9年前の平成18年に販売を開始した4棟の大型マンションのうち、11階建ての1棟にて、渡り廊下のつなぎ目が上下に2cm程度ずれていると発表されたのだ。
- 売 主 :三井不動産レジデンシャルと明豊エンタープライズ
- 施工主 :三井住友建設
明豊は上場企業だが認知度が低い。そのため、住民にとってこのマンションは三井のマンションということになる。報道直後には、建設施工時の問題ということから、施工主の三井住友建設の株価が大暴落。
10月14日は、三井住友建設は1株159円→109円へと急落し、マイナス50円のストップ安で取引を終えた。
しかし、14日(水)15時の株式市場クローズ後に、事態は急展開を見せる。旭化成の子会社の旭化成建材が三井住友建設の下請け工事を行っており、データを改ざんしていたことを認め、プレスリリースを行ったのだ。
旭化成建材親会社の旭化成(3407)
突然の発表を受け、親会社である旭化成の株は大幅に下落。たったの4営業日で約3000億円の時価総額が吹っ飛んでしまった。
マンションの全棟建替には、200億円程度かかると、不動産の専門家がテレビで発言しているが、失った信頼は単純換算すれば、その15倍にもなるのだ!住居は人の生活だけでなく、生死にも関わり得る。不動産は信頼が何より大切な業界の一つである。そのため、株主の反応は厳しいものになっているのかもしれない。
【株価の推移】
- 14日終値 917.7円
- *旭化成データの改ざんを発表*
- 15日終値 792.7円 -125円
- 16日終値 798.2円 +5.5円
- *全棟建替を前提とした住民説明*
- 19日終値 730.0円 -68.2円
- 20日終値 700.5円 -29.5円
- 21日終値 741.4円 +40.9円
- 22日終値 735.3円 ー6.1円
- 23日終値 735.3円 ±0円
(時価総額 14日時点:約1兆2872億円 → 20日時点:約9825億円)
施工主の三井住友建設(1821)
一方、施工主である三井住友建設は報道初日こそストップ安となったが、損害賠償の矛先が、不正を発表した旭化成建材に向いた事により、翌日はリスクオフされ回復する。しかしその後も弱含みの展開になっている。こちらも、5営業日で約360億円の時価総額が吹っ飛んでしまった。
【株価の推移】
- 13日終値 159円
- *マンション傾くと速報*
- 14日終値 109円 -50円
- *旭化成データの改ざんを発表*
- 15日終値 135円 +26円
- 16日終値 131円 -4円
- *全棟建替を前提とした住民説明*
- 19日終値 122円 -9円
- 20日終値 115円 -7円
- 21日終値 118円 +3円
- 22日終値 119円 +1円
- 23日終値 123円 +4円
(時価総額 13日時点:約1293億円 → 20日時点:約935億円)
今後どうなる?
販売主の三井不動産レジデンシャルを含め、この問題への住民対応を世間は注目してみている。混乱が拡大しないような、住民第一の協議が進められることを期待したい。
なお、14日に旭化成よりプレスされたペーパーには以下のように書かれている。
旭化成建材は、建物の補強・改修工事および他棟における調査に要する費用についてはその全額を負担することにしており、今後とも、居住者様の安全を最優先に、売主(三井不動産レジデンシャル株式会社)様、施工会社(三井住友建設株式会社)様と協力の上、しかるべき対応を行ってまいります。
(引用:プレスリリースより)
その補償範囲に不透明性が残るが、株式市場の参加者たちは、どのような判断を今後下すのであろうか。しばらくはその動向を見守りたい。
さらに、旭化成建材は、過去10年間に杭打ち工事を行ったデパートやマンションなど、合計3000棟の調査を行うことを発表している。10/22(木)には対象物件の概要を公表した。
今後、類似したマンションが出てこないことを願いたい。
【追記】旭化成建材がくい打ち施工をした物件3040件の所在地と概要はこちらから。
案件概要、過去の類似事件の補償内容、マンション選びのポイントに関する記事はこちらから
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