キングジム宮本彰社長。テプラなどユニーク商品開発の秘訣(カンブリア宮殿)
2015/05/08
本日のカンブリア宮殿は、事務用品の王様であるKING JIM(キングジム)の社長、宮本彰社長だ。オフィスに行けば必ずどんなオフィスでも置かれているであろう、テプラやキングファイルを販売するこの会社、「世界初の商品を出すこと」を方針とし、取り組みや、考え方がユニークであったので、記事に残したい。最近、仕事をしながら、業務にもだいぶ慣れているため、頭で考えることが少なくなってきてマニュアル君になりつつある30代の自分としては、この攻めの発想は時折振り返り、考え直したいと思う。大変学びが多い放送であった。
(本日の格言)
「10個に1個売れれば良い。失敗するのは当たり前。売れないことは恥ずかしいことではない。ヒットへの良い勉強だ!」
キングジムってどんな会社?
まずは基本データから。会社のホームページはこちらから。400人程度の会社だが、放送を見る限り非常に元気のある会社だと感じた。社員が生き生きしている様子が素晴らしかった。株価も堅調に推移しており、中規模だが優良企業だ。
その商品も、テプラからキングファイル、そして最近では、メモを取る機能に特化した電子文具である「ポメラ」が大人気商品となっている。
平均年齢:43.0歳
平均勤続年数:18.6年
従業員数:403人キングジムは事務ファイル、電子文具メーカー。事務用ファイルで国内首位。ラベルライター『テプラ』も手掛ける。キングジムの26.6.20現在の平均年収は620万円(624万円)。売上高は306億円(292億円)、経常利益は11億円(8.0億円)、当期純利益は8.6億円(5.3億円)を記録。(26.6.20決算。カッコは前期値)
競合他社(同業界で売上高が近い企業)はナカバヤシ、三菱鉛筆、コマニーなどが挙げられる。(年収ラボ調べ)
宮本彰社長のモットー(9割外れても1割を狙え)
万人が支持するよりも、1割の人が絶対に買いたい商品を狙う。これがキングジムの方程式だ。
それを象徴する商品が、メモ機能に特化した「ポメラ」だ。ポメラには、インターネットやメールの機能などはないため、純粋にメモを残すための商品だ。そのため、街頭インタビューにおいても、多くの人は、「スマホでメモを打つからいらない」とか、「メール打てないんですよね?いりません」といった回答であった。しかし、作家の方は、「パソコンだと、インターネットで集中力が削がれてしまうから、ポメラは重宝している。」と答えていた。
そう、9割外れても、1割の大当たりを狙う事業の運営なのだ。ソフトバンクの孫社長や、ファーストリテイリングの柳井社長も、1割りバッターでも大きなホームランを打てれば良い、というスタンスだが、世界初のユニークさを求めて、1割を狙うそのスタンスは、学ぶ点が大きいと感じた。
キングジムの4つの掟
- 1.一割の人の心に刺されば良い
- 2.市場調査はしない
- 3.居心地の良いニッチを狙う
- 4.ダメ出しされても自分を信じる
宮本社長いわく、「毎年発表される日経のヒット商品番付は、自分がほとんど持っていない商品であることに気がついた。万人が買うようなヒット商品は実は余りなく、少数の人が買えば十分なのではないか。1割といっても、1億2000万人の日本では、1200万人の購買ポテンシャルがあるということだ。一割の人の心に刺されば良いんだ」とのこと。
また、「ポメラはメモ機能特化型の電子文具であり、作るのは難しくない。そして、競合がいない。コレが居心地の良いニッチ(隙間)だ。居心地の良い市場規模は、年間売り上げで数十億程度。五十億を超えると、大企業が参入してくるため、それ以上のものは、競争が激しく儲からない。居心地の良いニッチはここにある。」との考えだ。
また、商品開発社員には、「自分の欲しい製品を作れ。だから市場調査は必要ない。そして、上司を含めた誰の言うことも聞くな。自分を信じろ」と宮本社長は語っているというのだから驚きだ。しかし、それで成長を続け、実績を挙げている点が素晴らしい。
新入社員は入社式でモノマネをする?
ユニークな発想は、ユニークな行動から生まれるのだろう。キングジムでは、新入社員に対して、入社式でモノマネをさせるなど、とにかく個性を出すことを推奨しているようだ。入社面談でも、一芸に秀でた人材を意識的に採用しているようだが、宮本社長いわく、「素晴らしい商品は大体変な人が作っている」ということ。実際、そうなのだろう。
また、新入社員には、新規事業の提案を義務として課し、新入社員がグループで真剣に新規事業を検討する取り組みも行っている。入社直後から、実践ベースの訓練を積んでいるのだ。新入社員の方々も、非常に爽やかにまじめに取り組んでいる様子が伺えた。
そんな、キングジムの創業経緯は?
宮本社長の祖父である、宮本英太郎氏が前身となる会社「名鑑堂」を1948年に仲間と設立したのがきっかけだ。この、宮本英太郎氏が「人まねはするな。世界で初めての事をしなさい」と言い続けて、それを聞いて育った彰氏が、現在同じスタンスを持つのも納得だ。
ビジネスの始まりは、一つのアイデア商品であった。創業当時の原点となった商品は、「キング人名簿」と名づけられたアドレス帳だ。着眼点は、年賀状を利用したところにあった。「キング人名簿」では、年賀状に書かれている名前と住所をはさみで切り抜き、切り抜いた箇所をそのまま名簿に指せば、アドレス帳ができるという、なんとも原始的だが画期的な発想であった。
その後、会社が大きくなったきっかけは、1964年に発売され、現在、5億冊を超える国民ヒットになったKINGファイルを作ったことだ。
コンピューターという黒船が来襲し危機・転機が訪れる
現社長の彰氏が専務となった1980年代、ビジネスシーンにコンピュータが登場し始めた頃、コンピューターが普及すれば、オフィスから紙がなくなる。そして、キングファイルが不要になってしまう、との強い危機感から、彰氏は新規事業プロジェクトを社内で立ち上げた。それが、「電子文具」だ。
そして、そのアイデアの一つが、打ちたい文字を自由にプリントしてテープとして貼れる「テプラ」であった。いまや800万台を超え、販売総額3000億円にもなるモンスターヒット商品だ。
しかし当時、社内からは、文具屋が電子製品を作ることへの反対意見があった。しかし、宮本氏は一歩も譲らなかったという。
しかし、電子文具をつくれる技術者はおらず、結果が出せぬまま、1年、2年が過ぎて、つらい時期を過ごした。宮本氏は、日本中の電機メーカーを歩いて回り、プロジェクト発足から3年たった1988年にテプラを販売する。てぷら1号機は16800円で販売され、その新しい誰も見たことがない製品は、大ヒットした。
その結果、文具に頼っていた収入構造は、テプラなど電子文具が48%、文具は36%、その他16%という強固な売り上げ構造に変わったのだ。
キングジムの発想術
- 1.極端に絞り込め
- 2.組み合わせろ
例えば、メモを打つ機能に特化した「ポメラ」は1に該当する。そして、名刺管理スキャナーである「ピットレック」は2に該当し、名刺入れとデジカメを組み合わせただけだが、新しい商品として人気を博している。
本日の格言
特に若手の社員に、商品開発を完全に本人に任せて、育てる社の方針も素晴らしい。そして、どんな尖った商品であっても、9人の役員が反対しても、1人の役員が賛成すれば事業化検討が継続することとなる。そんな中で、宮本社長が言った言葉を、本日の格言として残しておきたい。
「10個に1個売れれば良い。失敗するのは当たり前。売れないことは恥ずかしいことではない。ヒットへの良い勉強だ!」
素晴らしいチャレンジング精神。頭を柔軟に発想力を持って、私も仕事に取り組むように、意識して、もっとチャレンジをしていこう、と考えさせていただいた。
長文ご覧くださり、ありがとうございました。
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